一人ひとりの個人的な思い(=妄想)を起点に、多様な暮らしの創造へとつながる求心力のある「問い」をつくり出した2024年度の「日野市妄想実現課(以下、「妄想実現課」)」。2025年2月18日(火)に開催した最終発表会では、自らの暮らしの中の違和感と向き合い、対話を通してたどり着いた問いやそのプロセスが、研修生たちから発表されました。およそ5ヶ月間の妄想実現課の活動は、研修生に何をもたらしたのか。3名の研修生が、改めてこれまでの道のりをふりかえりました。

多様性と可能性にあふれた最終発表会

—まずは最終発表を終えた今の気持ちを聞かせてください。

妄想実現課2024年度研修生 塚本紗央さん(以下、「塚本」):思っていたよりもたくさんの方が見にきてくださったので、発表自体は緊張しました。ただこれまであまり深く話す機会のなかった研修生たちの考えを聞くのは面白かったです。ワークショップで同じグループになったことがある研修生の発表は、そのときの対話と問いのつながりを見つけられて興味深かったですし、全く関わりのなかった研修生は、発表を聞いてもっと話してみたくなりました。

日野市妄想実現課2024年度研修生 塚本紗央さん

妄想実現課2024年度研修生 徳増桃杏さん(以下、「徳増」):私も塚本さんと同じく、ほかの研修生の発表を聞くのが本当に楽しかったです。普段の生活の中で人が何を考えているのか、何に違和感を感じるのかというのは、本当に人それぞれなんだなということを改めて感じました。みなさんの問いやアクションへの発想も、自分では思いつかないようなものがたくさんありました。またプレゼンも人それぞれで、シートのつくり方、話し方、インパクトの出し方など、研修生たちの発表から楽しく学ぶことができました。

日野市妄想実現課2024年度研修生 徳増桃杏さん

妄想実現課2024年度研修生 木戸葵さん(以下、「木戸」):妄想実現課の研修の中でワークショップを通してさまざまな年代の方とお話ししてきましたが、私もやっぱり色んな考え方があるんだなということを最終発表で改めて感じました。考え方や視点は様々でも、みなさんが設定した違和感や問いが、本当に自分の暮らしに身近な地域の中にあるもので、同世代やもっと若い年代でも自分と同じような意識を持つ人がいることに気づくことができました。一方で自分にはない発想のアイデアもあり、妄想実現課のこれからの活動だけでなく、自分の仕事や暮らしの中でも活かせるような視点を得ることができたと思っています。

日野市妄想実現課2024年度研修生 木戸葵さん

—大坪市長や多摩美術大学で講師を務める高見真平氏、日野自動車株式会社の関口裕治氏からのフィードバックを通じて、研修生が発表した問いがさらにブラッシュアップされていく場面もありました。ご自身の問いへのフィードバックはどのように受け止めましたか?

木戸:まさにその通りで、コメンテーターの方とのやり取りで、自分の気持ちへの理解や問いに対する解像度が深まっていきました。大坪市長とお話しすることはもちろん初めてで、市長と市民はとても距離があると思っていましたが、私たちと同じ目線に立ってお話ししてくださった印象でした。とても貴重な経験ができたと思います。

塚本:私はいただいたフィードバックなどから、私たちが感じている地域の中での違和感について、行政も課題として認識して解決しようとしていることに気づけて嬉しかったです。私が立てた問いは地域コミュニティに対する違和感から生まれたものですが、地域コミュニティは1年くらい前から高校の卒業研究で取り組みモヤモヤしていたテーマでした。そんな中で、妄想実現課でワークショップを重ねるうちに、自分が大事にしたいポイントや考え方の軸がクリアになっていったので、最終発表やフィードバックの時間もその思いを素直に伝えることができたと思います。

他者の言葉を通して知る自分と地域への思い

—妄想実現課では、ワークショップの中で対話を通して自分の思いを整理し言語化していきました。このプロセスはどのような経験になりましたか?

徳増:私は日常の中でそこまで違和感を抱えていたわけではなかったので、ワークショップで研修生やメンターの方と話すうちに、自分の中に潜んでいた思いを初めて認識し、話すうちにその思いが鮮明になっていったという感覚でした。ほかの研修生とペアになって話す時間では、私が脈絡なく話したことを相手が整理し分析してくれて、自分が無自覚に抱えていた思いが、実は本当に解決したいと思っていることだったという発見がありました。それが最終発表での問いにつながっていきました。私自身は自分のことを客観的に捉えて伝えるのが苦手だったので、ペアでの対話はとてもありがたかったです。

—日野市としても新しい挑戦だった初年度の妄想実現課に参加して、得られたものはありましたか?

徳増:考えるプロセスを通して頭のひねり方を学んだ気がします。ワークショップの中で、同じテーマに対していくつかの問いのつくり方や、その問いから考えられるアイデアの例などを教えていただきました。私はある程度条件やルールがあったほうが考えやすいので、考え方のプロセスを学んだことで、自分の違和感から問いへの道筋を捉えることができました。こうした思考のプロセスは、勉強や日常生活でも活かしていけそうだなと思いました。また、私はこれまで「地域」についてあまり意識せずに生きていたので、妄想実現課に参加し、自分より若い世代の人たちもこんなに地域のことを考えているんだという驚きや、こんなにも見えている世界が違うんだという気づきがありました。身の回りの地域や人の見え方が変わったと思います。

木戸:社会の中で「若者」という立場である同年代のみなさんと一緒に話すことができたのが、妄想実現課に参加して良かったと感じるいちばんの点です。私はこれまで色んな地域を転々としてきたので、やっぱり人とつながっていたいという思いが根底にあります。だからこそ、今までは他人として街中ですれ違ってきたかもしれない人たちと、妄想実現課の研修生として出会って対話し、多様な考え方を知ることができたのはとても嬉しかったです。また、自分が暮らす地域に対して関心が高まり、愛着も深まった気がしています。問いに向かう中で身近な地域のことを思い、自分はこの先も暮らしていくであろうこの地域にどんな貢献ができるだろう、下の世代に何を残していけるだろうということを考えるきっかけにもなりました。

徳増:確かに、私も地域への関心が高まりました。これまで本当に関わりがなかったので、市の職員の方たちが話を聞いて一緒に考えたり、模索しながら取り組んでくれることに驚きました。地域に対して温かさや居心地の良さを感じられるようになったと思います。

塚本:私も、研修生同士のつながりができたことがいちばん良かったです。ワークショップではほかの人の話からの気づきが毎回あり、日常の中で自分のことや違和感を感じることなどについて考える時間が増えました。これは妄想実現課に参加したからこそ生まれた時間だと感じています。あと私は行政との関わりはこれまでほとんどなかったのですが、自分の意見を行政に伝える、自分の思いを表現するというのはとてもいい経験でした。市の職員の方や市長と直接関わることで、行政を前よりも身近に感じられるようになった気がします。

世代を超えた歩み寄りが地域の未来を生み出す

—最終発表会には会場にたくさんの地域の方が見学にきていました。地域からの若者に対する期待をどのように捉えていますか?

塚本:みなさんとても温かく見守ってくださったな、という印象がありました。地域コミュニティについてリサーチした際には、上の世代の方たちと若者たちの両者が、お互いを知らないまま距離を取り合っている印象を受けましたが、最終発表会では温かい雰囲気を感じて嬉しかったです。

徳増:私は地域の方や社会的に立場のある方たちの時間を無駄にしないような話ができるか不安な気持ちもありましたが、発表に対してさらに自分の思いを聞いてくださったり、大人の方から真剣にフィードバックをもらえたのは、とても印象的でありがたい機会だったと思いました。

木戸:今、選挙に行かない若者が多いのは、社会に対する無力感のようなものが一つの大きな原因だと考えられていると思います。そんな中でも若者である私たちが何を考えているのか知りたいと思ってくれたり、若者を中心にした活動に興味を持ってくれる方が上の世代にいらっしゃる。それはより良い地域を一緒につくっていこうという歩み寄りの気持ちだと感じますし、関心を持っていただけることを純粋に嬉しく感じます。

それぞれに妄想実現課での活動の手応えを語ってくれた研修生のみなさん。研修生たちが対話を通して導き出した20を超える問いの誕生で、2024年度の活動は幕を閉じました。2025年度はいよいよ妄想の実現を目指しアクションを生み出していきます。