29歳以下の研修生が集まり、個人の妄想を起点に多様な暮らしの創造を目指す「日野市妄想実現課(以下、「妄想実現課」)」。今年度は3つのチームがプロジェクトの実現に向けて議論を進めています。9月1日(月)から始まったクラウドファンディングに先立ち、8月26日(火)に日野市多摩平の森産業連携センターPlanTにて、3チームによるプロジェクト公開説明会が行われました。

違和感や問いを共有しとことん掘り下げチームで立ち上げるプロジェクト

研修生たちが自分の“しあわせのタネ”や暮らしの中で感じる“違和感”をもとに、みんなが解きたくなる問いをデザインした第1期を経てスタートした今年度。研修生たちのチームに日野市の若手職員や地域で活動するメンターが加わり、チームごとにプロジェクトの立ち上げ準備を進めてきました。3つのチームが取り組むテーマは「プレイスメイキング」、「世代共生&セーフティネット」、そして「ふるさとブランディング」。どれも第1期の研修生がデザインした問いに端を発し、違和感や課題を改めて掘り下げながら、アイデアを出し合いプロジェクトを生み出そうとしています。

思わず立ち寄れるくらいのゆるいつながりを生み出す仕掛け

居場所づくりを考えるAチームのプロジェクトは、地域や人との出会いのきっかけとなる「まちかどに“ちいさな私の部屋”をひらく。通りすがりと、ゆるくつながるしかけづくり。」。駅前やショッピングモールなど、さまざまな人が日常の中で立ち寄ったり通りかかったりする場所に、誰でも使える小さな展示ボックスを設置し、その展示スペースを貸し出す取り組みです。

展示ボックスの利用者は、自分の作品や本を展示する、趣味や活動をPRするなどボックスを自由に使うことができます。さらにAチームでは、通りかかった人たちが展示に対するリアクションを伝えられるような仕組みづくりも検討中です。

このプロジェクトの背景には、「日常的に困っているわけではないけれど、なんとなく寂しいときがある」、「SNSでのつながりはあるけれど、リアルな日常の中で誰かと関わるきっかけがない」という、若い研修生たちの現状がありました。そこで立てられた問いが「思わず寄り道をしたくなるような、みんなの知恵袋が集まる場所をつくるには」です。この問いからスタートしたAチームでは、“思わず立ち寄る”くらいの気軽さで“ゆるいつながり”が構築できる仕掛けづくりとして今回のプロジェクトを立ち上げました。

Aチームが展示ボックスの設置で生み出したいのは、負荷の高すぎない人付き合いや地域との程よい距離感であり、それは現代の地域社会において想像以上に多くの人と共感し合える感覚なのかもしれません。研修生たちはこんな言葉で自分たちの思いやプロジェクトの狙いを話しました。
「より良い地域づくりにはさまざまな年代の人が参加することが必要だと感じているけれど、時間がない、恥ずかしい、気まずいなどの理由で参加できない人もいる」
「みんなでしゃべりましょう、つながりましょう、と押し付けるものではなく、地域や人とのゆるいつながりを感じられる場として、間接的な交流のきっかけにしたい」
「直接話さなくても、展示ボックスを見て“地域にこんな人がいる”ということを知ることが、地域に目を向けたり地域活動に参加するきっかけになるかもしれない」

クラウドファンディング終了後には、実際に市内に展示ボックスを設置し、利用者を募り実証実験が始まります。自分の表現や関心のある世界が誰かに届き、ささやかなコミュニケーションが生まれ、その積み重ねが自分の居場所や地域への親しみにつながり、場の価値が広がっていく。公共空間にさまざまな人が関わることで、次第にまちにポジティブな変化を起こしていくことを、研修生たちは期待しています。

困ったときに相談できるコミュニティを可視化する。地域みんなのセーフティネット

多世代による地域共生社会とセーフティネットの構築をテーマとするBチームのプロジェクトは「つながりマップ116」。世代の壁を超えて存在を気にし合える、困ったときに相談できるプラットフォームがある、そんな地域を目指し人のつながりが可視化できる「つながりマップ(地域の中の相関図)」の構築と、そのための定期的な「ごはん会」の開催がプロジェクトの柱です。

暮らしや仕事を通して関わってきた地域社会において、世代間の断絶やつながりの希薄さに課題感を抱いていたBチームの研修生たち。地域コミュニティ、福祉、防災など、それぞれが関心のある分野のことを共有し合いながら、あらゆる世代や領域を包摂するセーフティネットについて議論を続けてきました。市内に広がる人のネットワークを可視化した「つながりマップ」は、専門領域や属性、参加している活動ややってみたいことなどのキーワードが人にタグ付けされ、地域の人が抱える課題ややってみたいこともトピックとして配置されます。マップを手にした人が、困りごとの分野に詳しい人や、やってみたいことをともに実現する仲間と出会うきっかけとなるマップです。

「日野市は水源豊かなまちで、市内を流れる用水路の長さは合わせて116キロメートルにも及ぶそうです。『つながりマップ116』というプロジェクト名には、日野市に張り巡らされた用水路のように、人のネットワークが広がって地域全体のセーフティネットを構築していく様子をイメージしています」とチームリーダーの山瀬さんが、プロジェクト名の由来を説明しました。

月に一度開催予定の「ごはん会」は、多世代多分野の人が気軽に参加し一緒にごはんを食べるというシンプルな企画です。
「近年はアナログなコミュニケーションが不足しがちだからこそ、リアルな場で顔を合わせることに意味があると考えました。ごはんを食べながら、地域でやってみたいことやちょっとしたモヤモヤなどを安心して話せる場にしたい」と研修生。

ごはん会での新たな人のつながりや、その場で出た課題やアイデアは、その都度つながりマップに落とし込みます。更新され続けるつながりマップは、運営チームが情報を管理しネットワーク構築の架け橋となり、人や団体などをつなぐ地域のプラットフォームとして活用されるものとなります。Bチームがプロジェクトのアイデアを出し合いながら大事にしていたのは、「住むだけではもったいない」というキーワード。プロジェクトを通して、年齢を問わず多様な人たちが地域にいる意味を見つけ、住んでいることが楽しくなる地域社会の実現を目指します。

アイデアを考えるうちに日野が好きになる。「日野市バズらせ王決定戦」

「ふるさとブランディング」をテーマに、昨年度の第1期生がデザインした問い「日野市をバズる街にするには?」からスタートしたCチーム。今回の企画を立ち上げるにあたり、「そもそもなぜバズらせたいのか」「分かりやすい名所があれば違和感が解消されるのか」など、プロジェクトの核心部分について繰り返し議論を重ねてきました。そして企画されたのが、日野市の魅力再発見市民参加型プロジェクト「日野市バズらせ王決定戦」です。老若男女を問わず、市民や事業者、団体などの幅広い層から日野市を“バズらせる”アイデアを募集するこのコンテストには、日野市の認知度向上だけでなく、日野市の魅力を最大限に発信し、すべての市民が誇りを持てるまちにしたいという大きな目標があります。

「日野ってどこ?何があるの?」
プレゼンの冒頭で会場にこんな問いを投げかけたCチームの研修生たちは、自らがそう聞かれたときに「日野市出身と言っても場所すら分かってもらえない」「伝えるべきトピックが見つからない」などのモヤモヤした気持ちを経験し、その状況を解消したいという思いを抱えてきました。その個人的なモヤモヤが妄想実現課で問いとなり、「日野市バズらせ王決定戦」という企画で暮らす人たちの意識にアプローチすることで、まちに変化を起こそうとしています。たくさんの市民が、SNSでバズるような魅力を求めて日野市に目を向けることで、今まで見えていなかった地域の魅力を発見したり、地域の中でコミュニケーションが生まれたり、新たなネットワークが生まれることがあるかもしれません。そうした地域とのつながりが、地域資源の再評価や地域経済の活性化に、そして地域の人たちの暮らしの豊かさにつながるとCチームでは考えました。

「最終的な目標はバズること自体ではありません。バズるアイデアを考える過程で一人ひとりが日野市の魅力を再発見して、自分のまちに誇りを持つきっかけとなれればと思っています」とチームリーダーの増田さん。

「日野市バズらせ王決定戦」は日野市の地域共創プラットフォームやSNSなどインターネットのほか、市内のイベントで行うアンケートや日野市の施設に設置するアイデアボックスなど、さまざまな方法でバズらせアイデアを募集予定です。集まったアイデアからどのように“バズらせ王”を選定するか、またアイデアをどう実証するかなど、プロジェクトの実施に向けてここから具体的な議論を続けていきます。

研修生を応援できる。クラウドファンディングと出展・交流イベント

3つのチームのプレゼンが終わり、会場からはプロジェクトの内容や実施について、質問や新たなアイデアなども飛び出しました。9月1日(月)から始まったクラウドファンディングでは、3チームのプロジェクト実証の支援を募っています。若者たちの挑戦の場であると同時に、新たな市民参加の仕組みの実証の場でもある妄想実現課。市内外からたくさんの方に注目していただけることを願っています!

—クラウドファンディングはこちらから—

さとふる「日野市妄想実現課発!若者のアイデアを、地域みんなでかたちにしたい!」 https://www.satofull.jp/projects/business_detail.php?crowdfunding_id=602

—イベントのお知らせ—

妄想実現課の取り組みを伝える場として、9月14日(日)にイオンモール多摩平の森で開催される「おしごとフェス」にて、3チームがそれぞれのプロジェクトについて出展を行います。さらに9月18日(木)には、日野市多摩平の森産業連携センターPlanTにて、妄想実現課の取り組みやクラウドファンディングに興味のある方に向けた交流会を開催します。研修生たちが地域に飛び出す最初の機会です。ぜひお立ち寄りください。

●おしごとフェス
9月14日(日)10:00〜17:00
イオンモール多摩平の森(2F 無印良品の向かい側にて出展予定)

●妄想実現課交流会
9月18日(木)19:00〜21:00
日野市多摩平の森産業連携センターPlanT イベントスペース

—各チームのリーダーのコメント—

Aチームリーダー 遠藤友一さん
「自由に膨らませた妄想を実現する段階にきて、ここからは実現化を見据えながらバランスを調整し、地域の方が応援したくなるようなプロジェクトにしていかないといけません。その過程で一時的に諦めないといけないアイデアもありました。それでも小さく始めて徐々に発展させていけば、最初にやりたかったことや途中で諦めたこともできるようになるかもしれないと考えています。小さなスタートでも、達成したい価値からは目を逸らさずに進めていきたいです。Aチームは僕以外が学生なので、ここからみんなで若い力をさらに発揮して盛り上げていけたらと思っています」

Bチームリーダー 山瀬実乃莉さん
「Bチームは『つながりマップ』と『ごはん会』の2軸で、それぞれの役割や必然性について議論しながら、一方で自分たちが目指しているセーフティネットがどういうものかも改めて考えたりして、それらが確かに紐づいているという納得感をしっかりと得られるまでに時間がかかりました。チームのメンバーはすでに地域の中で活動していたり、貢献したい領域があったりと、地域に対する思いを一人ひとりが持っています。ミーティングでは誰かがアイデアを出すと『いいね』『面白そうだね』と肯定してくれる雰囲気があり、気負わずに議論しながらここまでこられたと思います」

Cチームリーダー 増田隆市さん
「“バズる”というワードがネガティブに捉えられてしまうこともあるので、最初に“バズる”についてたくさん議論しました。“バズる”ことがいちばんのゴールではなく、バズらせるアイデアを考える過程で日野市の良さを認識してもらう、というストーリーをメンバーみんなで共有するプロセスにいちばん時間をかけたと思います。メンバーはみんな積極的に関わって活発にアイデアを出し合えています。ここからアイデアの募集やバズらせ王の決め方などについてブラッシュアップしていきたいです」