たくさんの支援をいただいたクラウドファンディングを経て、3つのチームでプロジェクトの実証実験が始まった妄想実現課。まちの未来に向けたそれぞれのプロジェクトの進捗や、自分たちのアイデアの実現に奮闘する研修生たちの思いを聞きました。
プレイスメイキングに取り組むAチームは、まちの中に設置した小さな展示ボックスでゆるやかなつながりをつくり始めています。
さまざまな人が訪れる商業施設に設置した“小さなわたしの部屋”
居場所づくりを考えるAチームのプロジェクトは、地域や人との出会いのきっかけとなる「まちかどに“ちいさな私の部屋”をひらく。通りすがりと、ゆるくつながるしかけづくり。」。駅前やショッピングモールなど、さまざまな人が通りかかる場所に、誰でも使える小さな展示ボックスを設置し、その展示スペースを貸し出す取り組みです。
実証実験は2026年1月6日(火)から1月20日(火)まで、イオンモール多摩平の森で実施されました。展示ボックスが設置されたのは2階のエスカレーター横のスペース。14人の展示参加者が持ち寄った“ちいさな私の部屋”は、工作や科学実験、謎解き、パン、クラフトビール、地域活動など、それぞれの関心領域にまつわるアイテムで彩られ、賑やかな空間となりました。
そしてAチームでは、立ち寄って展示を見た人が、気になった展示や共感したポイント、感想などを残せる仕組みとして、展示期間中の「共感投票」を実施。また通りかかった人や立ち止まった人、展示に対して何かしらのリアクションをした人の数を定点測定し、取り組みの効果を検証します。まちで起こっていることに意識を向け、リアクションを残すことで生まれる間接的なコミュニケーションこそ、Aチームが当初思い描いていたゆるやかなつながりです。たくさんのリアクションを期待しつつ、展示がスタートしました。
多様なメンバーで生まれるアイデアを実行に移す
Aチームの出発点は、「思わず寄り道をしたくなるような、みんなの知恵袋が集まる場所をつくるには」という問いでした。そこからたくさんのアイデアを出し合い、議論を重ねてたどり着いたイオンモールでの実証実験。ここまでのプロセスや形になった展示ボックスについて、研修生たちに聞きました。
「僕たちがもともとやりたかったのは、地域の中でゆるいつながりを生み出すということです。直接会いに行ったり、面と向かって話したりすることにハードルを感じる人もいる。その一方でリアルな関わりのきっかけも求めているというチーム内での話が、『地域の中でゆるいつながりをつくる』という大きな目的となりました。そこから立ち上がったのが、通りすがりにちょっと立ち寄ったり、ちょっと覗いてみたりするくらいのアクションのきっかけとなる展示ボックスの企画です」
Aチームのプロジェクトの狙いについて改めて話してくれたのは、チームリーダーを務める遠藤友一さん。アイデアを出し合い企画を固め、具体的な準備の段階を経て、ようやく始まった実証実験。ここまでのプロセスでの苦労もたくさんあったといいます。昨年度から妄想実現課に参加している研修生の徳増桃杏さんは、企画のまとめかたや展示参加者集めなど、一つのプロジェクトを形にするうえでの難しさを実感したといいます。
「『ゆるいつながり』というキーワードはチーム内で共有できていましたが、そこから具体的に何かをやろうとすると、意外と考えることがバラバラだったので、方向性をまとめる段階が大変だった気がします。あとは展示ボックスのルールづくりや参加者集めも苦労しました。クラウドファンディングでは支援をしてくださる方がたくさんいたのですが、時間を使って何かをやってもらうということで人を集めるのは、なかなか難しいんだなと感じました」
今回の展示に参加したのは、学生や社会人など14名。Aチームの研修生たちもそれぞれの世界観でつくりあげたボックスを展示しています。研修生の吉田りささんは、地域コミュニティやまちづくりに興味があり妄想実現課に参加したといいます。吉田さんはAチームの目的となった「ゆるいつながり」について、「その先に続くきっかけになればいい」といい、プロジェクトのここまでの手応えについてこう話しました。
「展示ボックスの企画をかたちにしてみて、より多くの人、特に若い人が興味を持つようなプロジェクトをつくる大変さをとても感じました。それでも地域に関わる若者を増やすことはとても大事だと思っています。だからこそ、まちの中での今回のような取り組みが、自分のまちやそこにいる人に意識を向ける機会になったり、これをきっかけにさらにつながりが生まれる活動に興味を持ってもらえたりすると嬉しいです」
多様な属性のメンバー同士の意識合わせや役割分担は、今年度の妄想実現課でどのチームも一様に壁にぶつかり、乗り越えてきた課題だったようです。チームリーダーの遠藤さんは、メンバーの足並みを揃えプロジェクトを進める大変さについても言及しました。
「社会人も学生もいる中で、それぞれの生活スタイルでできる範囲の関わり方で進めて行きました。メンバーのモチベーションやできることを見極める苦労はありましたが、個人的には仕事以外での今の自分のキャパを知ることができました。またチームメンバーや展示に参加してくれた方、支援をいただいた方など、いろんな人の意見を聞きながら、理解し合いながら自分たちのやりたいことをかたちにしていくというプロセスは得るものが多かったと感じています」
地域とつながり視野を広げたプロジェクト運営
たくさんのプロセスを経て実施された、さまざまな人が利用する商業施設での実証実験。研修生たちにとっても地域とのつながりをつくり視野を広げる、刺激や学びの場となっていました。吉田さんは多様なメンバーでアイデアを実行に移すという体験自体が収穫だったといいます。
「私は大学の授業などでプロジェクトに参加したことはありましたが、社会人や地域の人など、多様なメンバーで企画をつくるのは初めてでした。オンラインのツールを使ってみんなの意見をまとめたり、図をつくったりという企画の段階も、イオンモールの場所をお借りするプロセスなども、みんなでプロジェクトをつくる上での一つひとつが学びになりました」
妄想実現課での活動が初めての地域への参画の機会となった徳増さんは、興味の幅が広がり、今後の進路や地域との関わりにも変化がありそうだと話してくれました。
「妄想実現課に参加してみて、地域の中にあるいろんな取り組みや、そこに関わっている人たちの存在を知ることができました。私自身もこれまで注目していなかった地域社会のことに興味を持つようになって、子ども食堂や空き家を使った取り組みなどを調べています。またプロジェクトの企画を考えたり運営したりすることが楽しいという発見もあったので、自分の進路を考える上でも妄想実現課での体験を活かしていきたいです」
イオンモール多摩平での実証実験は1月20日(火)に終了し、現在Aチームでは定点測定の人数や、およそ80名が参加した共感投票の集計を進めています。集計結果からはたくさんの気づきや新たな問いも生まれそうです。
実証実験にご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。
—日野市妄想実現課Aチーム Instagram—
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