たくさんの支援をいただいたクラウドファンディングを経て、3つのチームでプロジェクトの実証実験が始まった妄想実現課。まちの未来に向けたそれぞれのプロジェクトの進捗や、自分たちのアイデアの実現に奮闘する研修生たちの思いを聞きました。地域の中で気軽に声をかけあえる関係性の仕組みづくりを目指すBチームでは、世代を超えた地域の「ごはん会」を開催。そこで生まれた人のつながりを可視化する「つながりマップ(地域の中の相関図)」の構築に取り組んでいます。

困ったときに話せる、やりたいことを相談できる。そんな相手がいる地域を目指して

高校生、大学生、社会人が集まったBチーム。少しずつ世代が違いますが、共通して抱いていた暮らしの中の違和感は、「地域の中のつながりの希薄さ」でした。世代・属性の違いによる偏見や不寛容、断絶や無関心が、無意識のうちに生まれてしまう。そんな違和感を解消し、誰もが安心して暮らせる地域社会をつくるには。Bチームの研修生たちは、地域コミュニティ、福祉、防災など、お互いの関心領域を共有し合いながら、あらゆる世代を包摂する地域のセーフティネットとなるコミュニティづくりを考えました。

「困ったことがある、やってみたいことがある。そんなときに誰に相談したらいいのかわからない」、「地域の人とのつながりかたがわからない」。これも研修生たちが一様に頷く地域の中での課題です。そんなときに、地域の人のつながりやその人の得意分野が可視化された「つながりマップ(地域の中の相関図)」があれば、それがみんなのセーフティネットになるのでは。さらに月に1度の「ごはん会」を企画し、地域の人と食卓を囲み、ちょっとしたモヤモヤや、やってみたいことを安心して話せる場を開く。そこでの出会いは「つながりマップ」に落とし込まれ、少しずつセーフティーネットが広がっていきます。そんなイメージを共有しながら、Bチームは「つながりマップ116」というプロジェクトを立ち上げました。

妄想実現課のワークショップでアイデアを出し合うBチーム(2025年6月)

クラウドファンディングを経て始まった実証実験では、2025年11月8日(土)、12月6日(土)、2026年1月24日(土)の3回にわたってごはん会を開催。研修生たち自身が地域につながりがない状況からのスタートで、ごはん会の開催方法や告知、集客などの仕組みづくりに苦労したBチーム。実証実験の経過と課題について、研修生の山瀬実乃莉さんと岸野凌也さんに聞きました。

ごはん会はみんなで食卓を囲むというシンプルな企画だからこそ、「まずは自分たちの取り組みに共感してくれる人のつながりから広げていくことになった」と、企画の方向性を話してくれたのはチームリーダーを務めた山瀬さん。

「不特定多数に向けて告知するのではなく、チームの研修生やメンターのつながりから始めて、紹介制でネットワークを広げていくことになりました。ただ、思うように人が集まらなかったんです。それで3回目に児童館や子育て広場にチラシを設置したら、チラシを見て来てくれた方たちがいました。もしかしたら小さく始めるのではなく、初回に広く告知をしたほうがよかったのかもしれません」と、実際にやってみたからこそ見えてきた課題を挙げました。

Bチーム研修生の山瀬実乃莉さん(2025年8月のクラウドファンディング説明会にて)

岸野さんは集客について課題を挙げつつも、場をつくったからこそ生まれた人のつながりについて話しました。
「僕も、初回は紹介制でなくてもよかったのかもしれないと思っています。それでも実際に、1回目に参加してくれた方からの紹介で、2回目には子ども食堂を運営する方が来てくれたり、友だちに紹介してもらった方が来てくれたりというケースもあったので、反省点もありますが成果もあったと捉えています」

Bチーム研修生の岸野凌也さん(写真中央。2025年6月のワークショップにて)

あらゆる世代や領域と共有できる「みんなでごはんを食べる」会

1月に開催されたごはん会には、研修生の個人的なつながりの参加者のほか、2回目のごはん会からのリピーターや、子育て広場のチラシから申し込みをした子ども連れの家族など、小さな子どもから大人までさまざまな参加者が訪れました。テーブルに並んだごはんを食べながら自己紹介をし合い、研修生から妄想実現課やBチームのプロジェクトの説明を聞き、ぽつりぽつりと会話が生まれていきます。

自己紹介では、「地域のつながりがほしかった」、「子ども食堂」、「ビールづくりをしたい」、「ものづくりが得意」など、ほんの少しだけその人の人となりが見えるようなキーワードが出てきます。面と向かい合って真剣に話すのではなく、おいしいものを囲んで少しずつ知り合っていく。ぽつりぽつりと生まれる会話を通して、小さなコミュニティの兆しが浮かび上がってくるようでした。

2026年1月24日に開催された3回目のごはん会の様子。年齢も属性もさまざまな参加者が集まった

マンション自治会に参加しているという参加者が研修生たちに問いかけたのは、「どうしたら若い人たちが地域の活動に参加してくれるか」ということ。地域や自治会の取り組みに若い世代を巻き込んでいく難しさは、多くの地域で課題となっています。これは、ごはん会の開催にあたりBチームで議論したテーマでもありました。同じエリアに暮らしていても、そこにあるコミュニティに気づかなかったり、気になっていても入りにくかったりする。だからこそ「みんなでごはんを食べながら話す」という、すべての世代に共有できる企画の内容になったという経緯があります。実際に、研修生たちがごはん会に知り合いを誘うときには、プロジェクトの趣旨を説明しつつも「タダでごはんが食べられる」ということを前面に押し出して誘うといいます。またごはん会の参加者の中にも、「みんなでごはんを食べたい」という子どもの声がきっかけとなり参加してくれた方もいたようです。

ごはん会参加者に記入してもらう自己紹介カード

プロジェクトを立ち上げることで見えてきた地域と人のつながり

毎回の告知や集客に苦戦しながらも、実証実験期間に3回のごはん会を開催したBチーム、岸野さんはここまでのプロセスをこう振り返りました。

「今回の実証実験では、ごはん会やつながりMAPの具体的な進め方を決め、告知して人を集めるなど、一通り経験しました。企画や準備の段階でも大変な面はありましたが、自分たちが議論を重ねて考えてきたことを人に伝える難しさも感じました。それでもごはん会を繰り返しやってみたことで、本当にこの地域で積極的に動いている方たちと知り合うことができ、個人的にやってみたかったサウナの企画に協力していただくこともできました」

3回目のごはん会では、過去の参加者の協力を得て屋外でサウナ体験も実施した

みんなでごはんを食べることで広げていく人のつながりは、地域の人たちと関わりながら実現させた実証実験の場で、研修生たち自身が身をもって体感できた成果だったようです。山瀬さんは「地域活動へのハードルが下がった」とも感じていました。

「ここまでやってみて、ごはん会を開催するだけでも、場所や料理、参加者募集など、最初に考えていたよりもたくさんの方の協力が必要でした。人の集め方や告知などは、やってみないとわからないことも結構ありました。でも実際にやってみたことで、この先もし地域で何かやりたいことができたら、今回の経験やつながりが活きてくるような気がします。地域に対する気持ちのハードルはすごく下がったと思っています」

Bチームのプロジェクトでは、「つながりマップ116」というプロジェクト名の通り、ごはん会で生まれた人のつながりを可視化していくというところも含めたセーフティーネットの構築を目指しています。ごはん会に参加しつながりを持った人たちの情報をどうまとめていくか。ここからのネットワークの広げ方をどうしていくか。それがこれからのBチームの課題です。